片上小学校郷土クラプの児童たちが、郷上の歴史や地勢・風土等を踏査研究しているうちに、当地区にも語り継がれている伝説や民話が数多く散在していることを知りました。
そこで、発祥の事実やその内容を探索し、資料を収集して校内で研究発表をいたしました。それがこの「片上 むかしむかし」を発刊するきっかけとなりました。
伝説や民話は、もちろん説話でありますが、同じ説話でも童話やおとぎ話とは独自な性格をもっています。すなわち、地域性・風土性・歴史性をもっているということです。わたしたちが幼いころ、父や母から耳にした説話の多くは、時や場所に関係なく自由にストーリーが展開していった童話やおとぎ話でした。それに対し、伝説や民話は郷土という場所と歴史という時間の上に成り立っています。
そこに伝説や民話ならではの価値があるものです。また、祖先の文化遺産としての出土品による考古学的郷土理解も、好ましい郷土愛を育てることでしょうが、むかしの人びとの素朴な生活の中から生まれた伝説や民話には、あたたかい人情やきびしい自然とのかかわり合いの中でたくましく生きる「心」や「夢」を育てるすばらしい力があります。
児童の研究発表をきっかけに、興味や関心を一層かりたて民話に親しませる中で「郷土を知り、郷土を愛し、社会を大切にする心の育成」を願って、わずか二十編にすぎませんがこの小冊子を発刊いたしました。
昭和六十年十一月佳日
片上校 片上民話同好会
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